羽毛布団のマザーグースとはなにか?
羽毛布団と羽根布団は混同されやすいのですが、羽毛布団は水鳥の胸元から採れる「ダウン」と呼ばれる羽根を、50%以上使用した詰め物の布団のことをいいます。
ダウンは産毛のような形状をしていますが、大事な心臓を冷たい水などから守る役割を担っているので、非常に保温性が高いのが特徴。
軽くて温かく体を包んでくれますし、硬い軸のついたフェザーが高い羽根布団と違って柔らかく、快適な眠りを誘う、布団に最適な素材だといわれています。
ダウンの採取は大きく分けてアヒル、すなわちダックと、ガチョウ=グースからおこなわれますが、ガチョウの方が体は大きく、より体温を蓄える必要があるため、保温性の高い羽毛を発達させます。
そのためガチョウを使ったグースダウンの方が高品質とされ、需要も高いのですが、ダウンが生える面積は限られていますので、1羽の水鳥からごく少量しか採取することができません。だからこそ、羽毛布団の値段は高いのです。
その中でも、最高品質のダウンを生み出すのが「マザーグース」と呼ばれるガチョウです。
マザーグースは食肉用のガチョウの卵を産む、丁寧に管理された体格の良い、遺伝的にも質の高い親鳥のこと。
一般的なグレードのグースダウンを採る食肉用のガチョウと同じ品種ではあっても、飼育期間が3年以上と長いことから羽枝が大きく、核がしっかりとした、コシのある良質なダウンを蓄えます。
羽枝を気温に応じて開閉させるマザーグースのダウンは、まるで高い温度調節機能を備えたフワフワの綿のよう。
その柔らかさや保温性、そして耐久性も、グースダウンをはるかに凌ぎます。
だからこそマザーグースと表示される羽毛布団は、質の高い睡眠を得たい人におすすめなのです。
羽毛布団マザーグースの産地を確認
ただし産卵用の親鳥の全てが、最高品質な羽毛布団を作るダウンを生み出すわけではありません。
羽毛布団の詰め物として最高品質のマザーグースは、どこで生まれて育ったか、その産地が重要です。
なぜなら水鳥の羽根の質は、生息する環境によって大きく左右されるから。
羽毛は本来寒さから水鳥の体を守るために発達するものなので、冬場は-20度を記録するほど寒冷な国で育てられた親鳥しか、真のマザーグースにはなりえないのです。
飼育される環境も重要です。
長年にわたって卵を産み続ける親鳥は健康で体格の良い、厳選された個体ではありますが、飼育環境が悪ければその成長具合も悪くなり、当然羽毛の質が落ちることに。
水鳥の健康も考慮しない劣悪な環境下では羽毛の採取方法も残虐になりがちなので、羽毛を無理やりむしり取ろうとして、ダウンが傷んでしまうリスクも高いのです。
そのため希少性の高いダウンを生み出すマザーグースの産地は寒冷地であることと、高い飼育基準を厳守できる国に限定されることはいうまでもありません。
世界的にも有名なのは、次の2つの代表的な産地です。
・ポーランド
・ハンガリー
これらの国は緯度が高く極寒の地として知られていて、フワフワのダウンを蓄える水鳥の生育に最適な地域。
しかも国家政策として質の高いダウンの生産に取り組んでいるので、世界的に羽毛の評価が高いのです。
その他にも、次のような国々で生育されるマザーグースのダウンも品質の高さに定評があります。
・ウクライナ
・ロシア
・ドイツ
・フランス
・チェコ
・カナダ
これらの産地は豊富な水源地や湖沼地帯を抱える、自然環境の保全にも力をいれた国々です。
のびのびと育ったマザーグースは健康で、保温性・耐久性とも高いダウンを作り出してくれるのでしょう。
最近は中国をはじめとするアジア原産のダウンも「マザーグース」として輸入されていますが、その品質には大きな違いがあります。
マザーグースのダウンは世界中で需要があり、希少性の高さからお値段が極端に下がることはありません。
マザーグースと表記されていても、安価な羽毛布団は品質に問題がある可能性がありますので、産地にも注目して、良い商品を選んでいきましょう。
羽毛布団マザーグースのランクの確認
そしてもう一つ注意をしなくてはいけないのが、ダウンのランクです。
ひと言にマザーグースのダウンといっても、品質は農場や採取時期、採取後の洗浄方法によっても差がでます。
名産地で作られたマザーグースの中にも品質が劣るものもありますので、しっかり見分けていきましょう。
ダウンの色には純白のホワイトと、グレー味を帯びたシルバーがありますが、これは品種による色調の差ですので、品質には大きな影響を与えません。
保温力や耐久性といったマザーグースの特性は色が違っても変わらないのですが、日本ではシルバーよりもホワイトの方が好まれる傾向があります。
そのためシルバーダウンのほうが若干お値段は安く設定されるので、羽毛布団の中でもカバーから透ける色がシルバー系の商品は、自宅使いにおすすめの良品だといえるでしょう。
ただし中には品質の悪いグースダウンを混ぜていて、色が悪くなっているというケースもあります。羽毛をブレンドした商品にも、注意をしましょう。
最も質の良いダウンが採取できる時期は、晩秋です。
この時期のガチョウは冬に向けて羽毛を蓄えますので、保温力に差がでます。
また冬を越して春先に採れるダウンも量が多く、ふんわりと温かいのですが、繰り返し洗浄が必要なほど汚れた羽毛は、やはり保温力が良くありません。
きちんと管理された衛生的な飼育環境で育っているかどうかは、それほど品質に悪影響を与えるのです。
産地以外でマザーグースのダウンのランクを見分けるのは、ダウンパワー値でしょう。
ダウンパワー値とはその羽毛がどれだけ弾力に富んでいるかを数値化したもので、dp(㎝3/g)という単位で示されます。
この数値が高ければ高いほど保温力が高く、品質が良いと判断できますが、マザーグースと表記された商品の中にもレギュラー並みのダウンパワー値しか示さないものも…。
マザーグースのダウンパワー値には各メーカーで統一された基準が設けられていないのですが、440 dp以上の商品にのみ表示できるプレミアムゴールドラベルも品質の高さを判断する良い目安になります。
こういったラベル表記も、参考にしてみてください。
信頼できる布団業者を選ぶのも、大事なことです。
たとえば品質の良い手作り布団で定評のある櫻道ふとん店であれば、「マザーグース」と表記された商品には100%ポーランド産のマザーグースダウンが使われています。
羽毛布団の品質を見分ける方法はいくつかありますので、マザーグースという表記だけに注目するのではなく、しっかりとランクの高いものを選んでいきましょう。
まとめ
軽くて温かいと人気の羽毛布団の中でも、マザーグースのダウンを使ったものは質の高い眠りを約束する、最高級品です。
そのためお値段は張るのですが、そのかわり耐久性も抜群。
弾力があるので重みを受けてもへたれにくいですし、定期的に洗浄をしてリフォームをしていけば、15年以上は使えるという優れものです。お金を出す価値のある寝具だといえるでしょう。
マザーグースの羽毛布団はあなたの健康を守る、大切な財産でもあります。
「マザーグース」という表記だけで安易に選んでしまうのではなく、ぜひ賢く品質を見極めて、良いものを購入してください。